歴史小説を読んでいると、「フィクションには興味がないのだよ、事実だけが知りたいのさ」と兄が言った。 しかし事実が書かれた歴史書なんて存在するのですか? 見た事をありのままに書くなんて不可能だし、写真も動画も簡単に改ざんすることができるし、そうなると自分で実際に見たものしか信じられないようになるとか言うけど、そもそも見えているものが本当かどうかはもはやわからない世界になっているし、そう考えると見ている自分の感覚すらおかしいような気になってきて、自分というものが信じられなくなる。 現に僕には兄なんて居ない訳だし… |
オイスターズの新作「田」(平塚直隆作・演出)は、演劇ならではの面白さを示す舞台だった。何もない空間に役者が立ち、せりふを発すれば何かしらの世界が立ち上がる。一人が何役を演じても、何人で一役を演じても同じ。この作品はその演劇的手法を遊びながら、人間の想像力と認識について語った。 |